2014年2月22日土曜日

肉を買う。


ロンドンでお肉を、思い通りに買うのは、
私にとってしばしば難しい。

週末を控えた金曜日のBorough market。
普段はあまりお料理をしない印象のロンドナーだけれど、
パーティとか、恋人のお誕生日とか記念日とか、
特別な時に、男女を問わずに発揮するお料理へのモチベーション。

その金曜日はバレンタインデイで、
お肉屋さんはいつにもましてひとだかり。
みんながレシピを片手に、少しいいお肉を塊で買っている。
大切な人とのバレンタインディナーに。


マーケットのお肉屋さんは、
大きな冷蔵庫をすぐそこに持っていて、
まるごとの動物達が吊るされている。

骨も、皮も、しっかりとついていて、
作りたいお料理によって、部位や切り方、
大きさを聞いてくれる。

「ハロー、マダム!」
「どんなお料理にするの?」
「そのメニューなら、ここが最高だよ。」
「塊であげようか?それとも幾つかに分けるの?
厚さはどれくらい?切ってあげようか?」
「表に出てるのはこれだけだけど、冷蔵庫の方を
チェックしてあげるからちょっと待っていて。」
「どんな風に調理したいの、言ってごらん?
それなら、それじゃなくてこれだよ。」
「それは今熟成中だから出せるのがないけれど、
かわりにこの部位はどうだろう?」


大きなまな板で、
大きな包丁で、
何日か前までは生き物だった形のそれに、
きれいに包丁を入れて切り分けてくれる。



人だかりで
「すみませんー!」のタイミングに負けることしばし。
見兼ねた若手のお兄さんが注文をとってくれる。

どんなお料理をどんな風に作るのか、
明確にお伝えすることが大事。
もう二度と注文を取ってもらえないから。苦笑


「そこのバラ肉を300g!」
「これ?」「はいっ。」

「600gあるけど、半分に切る?」
「半分でお願いしますっ。」
「これでいい?このグラムでいい?」
「完璧です。」

「他には?」
「豚のミンチを200g、それから
牛のミンチはありますか?」
「そこにあるよ。」
「じゃあそれを100gお願いします!」

「後は?」
「それで大丈夫です。」

大声。笑



彼らはとても誇らしそうに働く。

「お肉のことなら、なんだって聞いてよ。
だって俺は肉屋なんだからさ。」
と身体が言っているみたいに。


誇らしく働く人を見るのはいい。
誇らしく働く人から、食べる物を買うのはいい。



ロンドンでお肉を買う、という、
至難。笑



小さなお台所の、
小さな窓から。

2014年2月10日月曜日

あみちゃん。


去年の5月に開催された Catering FESというのに
大好きな仲間達を誘って偶然出させて頂いて、
みんなの才能が伝わって優勝をさせて頂いて、

今、私の人生は、なんとなく思っていなかった、
けれど、とても素敵な展開に進んでいる。
相方、あみちゃんと一緒に。

すごく、いろいろなひとや、
いろいろなことに感謝している。

そのことに返せるくらいに
一生懸命進んでいる。


年末、とてもとても立て込んで、
お料理をしていながら、
自分が作ったものや、その味が、
もう思い出せないくらいだった。

1月はその余韻でぼんやり出来るくらいだった。


年が明けて、
あみちゃんがドレッシングの瓶を持って来てくれた。

年末の大きな仕事で余ったものらしかった。
そして、それは私が作ったものらしかった。

「おいしかったから、
残りを捨ててしまうのがもったいなくて、
冷凍しておいたよ。」

と、あみちゃんはそう言って。


確かにそれはおいしくて、
けれどどんな風に作ったのか、思い出せなかった。

瓶のなかに、ディルか、イタリアンパセリの
茎が入っていた。


相方のあみちゃんというひとは、
とても長くお料理の修業をした人で、
それは、フレンチ出身のあみちゃんが良くやるワザだった。


「この茎、あみちゃんが入れてくれたの?」

と聞いたら

「入ってたよ。
あやちゃんが入れたんだよ。」

だって。

年末の私は、あみちゃんを真似っこしたみたいだった。笑


あみちゃんががんばり続けた、
10年もの凄まじい修行を、
私は決して乗り越えることができない。

その10年間の日々や思いに
いつだって心からの尊敬をして止まない。


だから、
あみちゃんがほめてくれると、
私はいつもこっそりと、

とても嬉しい。

とてもとても嬉しくて、

幸せな気持ちになる。


思い出してすら、
誇らしい。笑