2013年3月4日月曜日

ハモニカの頃。


私がそのお店で働いていたのは、
今からもう10年以上も前のことになる。

今となっては吉祥寺の駅前に一大帝国を築く
ハモニカキッチングループも、
最初はたったひとつのお店だった。

発展途上にあった当時のハモニカキッチンは、
発展途上のお店独特の疾走感みたいなものに包まれていて、
おもしろいことを探して、みんながその小さなお店に集った。




まだ、10代だった頃から働き始めて、
たくさんのおいしいものを食べて、
たくさんのおいしいお酒を飲み、
たくさんのおもしろい人達に出会った。

代々木上原シラントロの大野君もそんな中で
知り合った一人だった。



なんであの頃、あんなに時間があったのだろう、
と思うのだけれど、
仕事の日も、そうじゃない日も、
スタッフも友達も、常連さんも、
とにかく毎日誰も彼もが集って、

飽きもせずに、繰り返し飲んでは、

あの映画観た?あそこのカフェに行った!
あの雑誌がおしゃれだった。
あのデザイナーはいけてない。
あの靴がかわいい。
あの子がすき。
あのエトセトラ・・・、あのエトセトラ・・・。

いったい今は何時だろう、という時間まで、
なにかとてもおもしろくて、重大らしきことを
おしゃべりし続けた。





今回の落語会でご一緒して下さるwagashi asobiさんは、
大野君が紹介をしてくれた。

どうしてもwagashi asobiさんにお願いしたいなぁ、
と思っていたけれど、どうしたらよいものか、
としばし足踏みをしていた。

けれど、紹介をしてくれた大野君も、
wagashi asobiの稲葉さんも、
快く会に賛同をしてくれた。
おもしろそうだね、手伝うよ、
一緒にやりましょう、と言って。



先週、代々木上原のフライヤー配りを手伝ってくれた大野君と、
開店前の、西陽が差し込むシラントロのソファで、
いつかのように話し込んでいた。

あれはなかなか素敵だね。
あれはおいしいよ。
あれはこんな風にできているよね。
あれをこうしたらおもしろいよね。
あれを自分ならこうするな。
あれをあんな風にやりたいんだよね。
あれエトセトラ・・・、あれエトセトラ・・・。


あの頃のように、
今でも変わらずにわたしたちは、
おもしろいことを探している。


けれど、あの頃と少し違うのは、

そのおもしろいことは、
自分たちの手でつくり出せるね、
きっと。

と、思っているのかもしれないことだった。

そして、そんなことを思っている人たちと、
なにか出来たらいいな、と思う。



春のような陽気の窓の外に、斜めの光がきれいだった。

おしゃべりは楽しくて、
終わりそうになかった。

ハモニカの頃をほんの少し、
思い出す。





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